2019年8月、偶然YouTubeで見つけた1本の動画。まだ投稿されたばかり。何だこりゃって軽〜い気持ちで見たら、ぐいぐい引き込まれ、心がザワメキたってとんでもない事になってしまった。
ストリートピアノの偶然
2019年8月、北海道のストリートピアノなるもので2人の若い男性が連弾する動画を見た。2020年現在とても有名になりピアノYouTuberとして活躍されている「よみぃ」さんと「ふみ」さん。
ふみさんが千本桜という曲を弾いているところに、偶然よみぃさんが居合わせ、途中から乱入と言わんばかりの絶妙な入れ替えにより、飛び入り連弾する。
本当に偶然か?と疑ってしまうほどのコンビネーション。
2人の息はピッタリでとにかくカッケー。
どハマりしてしまった。
そしてそのカッコ良さは、男性がピアノを弾いているということにも起因する。
その昔、自分が子供の頃、ピアノは女子の習い事というイメージが強かったから。
そしてもう一つ、ピアノが黒くないことに驚いた。
なんじゃー、このカラフルなピアノは〜
いつの間にか趣味もなくなり仕事ばかりの自分にとって、こんなに自由で楽しそうなピアノの世界があるのかと衝撃を受け、たちまち魅了されてしまった。
この時からピアノアンテナ張りめぐらし、知らず知らずのうちにグィーっとピアノワールドに引き込まれることになってしまった。
知らないことだらけ
この15年ほどは、新しい音楽をほとんど聴いていないし、CDも購入していない。って言うか、今は音楽ダウンロードする時代ということにも取り残されているくらい、仕事中心の毎日を過ごしてきた。
そんなわけだからYouTuberという職業があることも知らない。
バズるという言葉も知らない。
ボカロという音楽のジャンルがあることも知らない。
街中にピアノが置いてあって、それを男性が華やかに軽やかに演奏する姿を目にすることができる状況を知らない。
知らないなら、これから知っていけばいいんだ。
なんて時代は変わったものか。いや、変わったんじゃなくて、若者が築いてきたんだな。行動した結果だ。
若者だけじゃなく自分らの年代でも、こんな風に音楽を楽しめる状況を牽引してきた人達がいるんだろうな。普通に考えたら維持管理面で誰もが弾けるピアノを置いておくことなんて、簡単には採用できないだろうに。
ストリートピアノ、とても魅力的な取り組みだ。
ピアノいいな。音楽いいな。
普段からテレビもYouTubeもほとんど見ない生活。仕事して帰って寝るの繰り返し。
そんな自分が2019年の夏にストリートピアノの動画を知ってから、毎日通勤電車で色々なピアノ動画を視聴するようになった。
自分の中で既に何か動き出しているようだ。
しばらくすると、おすすめ動画とか関連動画とかいうものの存在に気付いた。そして「marasy8」とか「まらしぃ」とかいう名前がずらり、目に留まる。
「よみぃ」に続き「かてぃん」、そして「まらしぃ」? 何やー
今時の人は小さい「ぃ」が名前につくんかー、流行りかい?と思いつつ、「まらしぃ」という人の動画だけは見なかった。
なぜか。
何となく。
ピアノの上に所狭しと、お人形さんがぎゅうぎゅう詰めに乗ってて、ピンクのサルが寝そべってる。きっとこれは見たらあかんやつ。
旅先で生のピアノの音が突き抜ける
そんなピアノ動画三昧のさなか、2019年11月の連休、旅先でかなり心揺さぶられる出来事があった。
訪れた先でのこと。目の前に1台の大きな黒光りするスタインウェイのグランドピアノ。なんかよく分からんけどゾワゾワっと来た。
自分でそのピアノを弾くどころか1音鳴らすことも鍵盤に触れることもできなかったけれど、その存在感に身体で何かを感じ取った。
その後しばらくして、別のグランドピアノのところで一人の青年が「昔習ってたんですよ」って言うじゃないですか。これは是非聴きたい。
恥ずかしそうにしている姿を見て、周囲にいた人達は気を利かせて離れてしまったけれど、自分だけは立ち去ることができなかった。
「弾くの久しぶりなんですよ」と言いながら椅子に座り鍵盤に手を置き、やや緊張気味に一息吸った瞬間、飛び出してくる音と共にビリビリっと来た。
もう訳分かんないくらい心拍数アップ、自分の中をズバーンと突き抜けていく何か。
彼の弾いたショパンの曲。
こちらが呆然と突っ立っていると、「久しぶりなんで指が全然回らないっすね」とサラリと言う青年。いや、もうこっちは羨望の眼差しっす。
自分の目の前で、動画ではない、生きた音がブワァァァッと出てきた。
カッコいいぜー!!
さっき自分の中を何かが突き抜けたけれど、それが戻ってきて、そいつにグワッと胸ぐら掴まれた。
やばい、ヤバイ、やばいぜー
何この気持ち。興奮を抑えるので精一杯。
落ち着け自分よ。
目の前で聞くグランドピアノの音は迫力があり、空気振動で伝わってくる音でいてもたってもいられない感じ。これ自分で弾けたらいいなあ。
なんかもう一度ピアノやりたいかも。ピアノの扉が開いた瞬間だ。